コスパ&タイパ
先週は長年の問いであった
「コスパの良いワインくださいゲストに対する接客問題」の
私なりの答えが得られた感慨深い週でした。
私が得た答えについて
同じことを誰かが言っているのかをしりたくて
あの後、ネット検索をしていましたら、
「コスパ(コスト・パフォーマンス)」を説明する中で
「タイパ(タイム・パフォーマンス)」との違いを解説する
専門家がたくさんいました。
コスパは「費用対効果」
タイパは「時間対効果」。
タイパ・・・
タイパねぇ。
ふーーーーん。
ってな感じでおりましたら、
昨日の閉店間際の16時ころにお越しのお馴染み様が
私にタイパを実感させてくれて、
いろんなことを気付かせてくれました。
そのお馴染み様は、開栓されたワインを
ご持参されていました。
それは前日の21時ころに開栓された
アルザスのベテラン生産者のピノ。
なんだかイマイチと感じたそうで、
「これはどうしてイマイチなのか?」って理由を知りたくて
わざわざ現物を持参してくださったのでした。
「なんで、なんで?」は成長のチャンス!
なのでさっそく試飲させていただくために
グラスに注いだ瞬間から
なんとすでにイイ香り!
色も明るい透明感のあるルビー色。
濁りやくすみなどないクリーンでクリアな色調。
もう一度、香りをすると
冷え過ぎて弱いではあるけれど
複雑さを感じる香りが見え隠れしていて
今のところ、悪い要素が見当たらない。
そして
試飲。
甘みが充分に出ていて
アルザスの細い酸味が通っていて繊細。
ベテランらしくバランスよくまとまっていて
完成度が高い印象。
のどに引っ掛からない。
丸っこいバランス。
傷んではいないし、
甘みが引き出せていて
美味しいなぁって思いました。
グルグル回していくと
樽の香りも上がってきて
ますます香り立ち、柔らかくなる味わい。
細く残る酸味の余韻。
私としては
「うっとり」に値する味わい。
お馴染み様が昨日の開けたてのときには
探すことの出来なかったであろう香りと味わいが、
昨日から今日、揺れに揺れて時間が経過して
いま、開いています!
このピノを創り出したワイナリーは
1639年創業のアルザスを代表する名門。
現在に至る385年の間、家族経営で守られ続けた
希有な存在のワイナリー。
その長い歴史ゆえに、使命を持ったワイナリー。
その使命とは、
フランスのアルザス品種らしさとしての味わいの表現と
家族経営ワイナリーとして「家」の味わいを表現するということ。
ヨーロッパはファースト・フードの食文化ではなく、
スロー・フードです。
食事に時間をかける食文化。
ですから、食とともに発展してきたワインも実は
時間をかけて飲むものとして捉えられてきた側面があります。
つまり、昔ながらのベテランの造るワインというのは
開けたてがいちばん控えめ(おとなしめ)だったりします。
控えめではあるけれど、そのあとポテンシャルを発揮します。
香りや酸味や渋みは時間とともに変化しながら落ち着いて
柔らかくなり、やがて一体となります。
この変化の幅を表現できるのが
ベテラン生産者が造り出せる素晴らしいところです。
ワインが「時間をかけて変化して美味しくなることの価値」は
付加価値だったはずだけれど、それは昔の話なのかな。
「タイパ」という価値観が比重を増してきた今は
開けてすぐ花開くような香りやバランスが整っている味わいが
美味しさの第一条件なのかな・・・と思いながら
一夜を過ごして、いま思うことは。
イヤイヤ、ちがう。
これは私の責任。
ちゃんとお客様の飲むペースを考慮したり、
期待している部分をヒアリングできていなかった私の責任。
お馴染み様だからといって
甘えてはいけない。
20代のころ、メートルドテルになりたくて
接客技術を高めたくて
飛行機に乗って何度も受講させていただいた
接客の師はかつて誌面でこのようにおっしゃってました。
「お客様のことはすべて覚えておき
先入観なしで挑むのです」
私はこれをすっかり忘れていたのだと思います。
昨日の出来事は
ゴールデン・フィフティーを迎え
ゆるく仕事をしていきたいという甘えた考えに
釘を刺してくれました。
お客様は私にいろんなことを教えてくれます。
その気がなくても
教えてくれます。
教えてくれるので
学ぶことができます。
皆様のお陰様にて
私の毎日は進化・発展・成長です。
S・hamada
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